主文
1原判決を取り消す。2被控訴人の請求を棄却する。
3被控訴人は,控訴人に対し,金89万6635円及びこれに対する平成13年8月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
5この判決は,3項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
(控訴人)主文同旨
(被控訴人)
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1本件は,1被控訴人が控訴人に対し,平成11年9月30日に貸し渡した78万円の残元金75万2947円及びこれに対する民法所定の遅延損害金の支払を求め(本訴),2控訴人が被控訴人に対し,被控訴人から平成4年1月8日以降平成11年9月30日までの間に借り受けた貸金債務につき,利息制限法所定の利率を超える利息の支払をしたので,これを元本に充当して計算すると,過払い金があるとして,89万6635円及びこれに対する民法所定の遅延損害金の支払を求めた(反訴)事案である。原審が,被控訴人の本訴請求を全部認容し,控訴人の反訴請求を全部棄却したため,控訴人が控訴した。
2当事者の主張
当事者の主張は,原判決1頁22行目から3頁11行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。
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第3当裁判所の判断
1(1)被控訴人が,控訴人に対し,別表の「年月日」欄記載の日に,「借入額」欄記載の金額の金員を貸し渡したこと(以下「本件各貸付け」という。),控訴人が,被控訴人に対し,別表の「年月日」欄記載の日に,「返済額」欄記載の金額の金員を支払ったことは,当事者間に争いがない。(2)証拠(甲1の1・2,2の1ないし4,3の1ないし3,4の1ないし116,原審における被控訴人代表者及び控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
1被控訴人は,貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)3条1項に基づき登録を受けている貸金業者である(平成13年3月27日時点での登録番号三重県知事(6)第a号)。
2被控訴人と控訴人は,本件各貸付けに当たり,利息年29.2%,遅延損害金平成4年1月8日から平成8年5月13日までは少なくとも年29.2%,同月14日から平成9年11月7日までは年36.5%,同月8日か
ら平成11年9月29日までは年39.75%,同月30日からは年39.79%,毎月の約定支払額は5万円以上,分割弁済金の支払が1回でも期限に遅れると当然に期限の利益を喪失する旨を約した。
3被控訴人は,控訴人との間で,平成8年5月14日,限度額融資契約証書(甲2の1)を作成し,被控訴人に交付したが,その証書には「契約番号,カ099003。
極度額,850000円。
最終返済日,平成10年5月30日。
借入期間,平成8年5月14日から平成10年5月30日まで。
約定支払日,毎月30日。
利率,実質年率29.2%。期限後利息
(遅延損害金)年率36.5%。
利息計算方法,借入残高×実質年率÷365日×利用日数。
元金返済方法,最低額返済方式とし5万円以上返済すること。
返済期日,毎月約定支払日。
支払金の充当の順位,毎月の支払いは遅延損害金,利息,元金の順で充当されるものとします。
次のいずれかに該当したときは貴社からの通知,催告がなくても期限の利益を喪失し期日未到来といえども融資残高金額に利息及び遅延損害金を付加して直ちに支払うものとします。
・・・約定支払日までに前記約定金額の支払いを一度でも遅延し或いは支払いを怠ったとき。」との記載がある。
被控訴人は,同日,残高確認書(甲2の2)を作成し控訴人に交付したが,その残高確認書には「契約番号,カ09900301。
受取金額,800000円。
本日残高,800000円。
旧債務残高は・・・。
平成9年8月30日まで弁済は16回払」の記載がある。
被控訴人は,同日,受取書(甲4の・)を作成し控訴人に交付したが,その受取書には「契約番号,カ09900202。
受取金額,710201円。
年利率,29.2。
期間,H08.04.26H08.05.13。
日数,18。
利息金,10081円。
元入金,700120円。
前回残元金,700120円。
今回残元金,0円」の記載がある。
被控訴人は,同年10月31日,残高確認書(甲2の3)を作成し控訴人に交付したが,その残高確認書には「契約番号,カ09900302。
受取金額,50000円。
本日残高,803000円。
旧債務残高は753000円。
平成10年2月末日まで弁済は16回払」の記載がある。
被控訴人は,平成9年5月10日,残高確認書(甲2の4)を作成し控訴人に交付したが,その残高確認書には「契約番号,カ09900303。
受取金額,50000円。
本日残高,817000円。
旧債務残高は767000円。
平成10年9月30日まで弁済は16回払」の記載がある。
4被控訴人は,控訴人との間で,平成9年11月8日,限度額融資契約証書(甲3の1)を作成し,被控訴人に交付したが,その証書には「契約番号,カ099004。
極度額,850000円。
最終返済日,平成11年11月30日。
借入期間,平成9年11月8日から平成11年11月30日まで。
約定支払日,毎月30日。
利率,実質年率29.2%。
期限後利息(遅延損害金)年率39.75%。
利息計算方法,借入残高×実質年率÷365日×利用日数。
元金返済方法,最低額返済方式とし,5万円以上返済すること。
返済期日,毎月約定支払日。
支払金の充当の順位,毎月の支払いは遅延損害金,利息,元金の順で充当されるものとします。
次のいずれかに該当したときは貴社からの通知,催告がなくても期限の利益を喪失し期日未到来といえども融資残高金額に利息及び遅延損害金を付加して直ちに支払うものとします。
・・・約定支払日までに前記約定金額の支払いを一度でも遅延し或いは支払いを怠ったとき。」との記載がある。
被控訴人は,同日,残高確認書(甲3の2)を作成し控訴人に交付したが,その残高確認書には「契約番号,カ09900401。
受取金額,830000円。
本日残高,830000円。
旧債務残高は・・・。
平成11年3月30日まで弁済は17回払」の記載がある。
被控訴人は,同日,受取書(甲4の77)を作成し控訴人に交付したが,その受取書には「契約番号,カ09900303。
受取金額,782796円。
年利率,29.2。
期間,H09.10.29H09.11.07。
日数,10。
利息金,6212円。
元入金,776584円。
前回残元金,776584円。
今回残元金,0円」の記載がある。
被控訴人は,平成10年9月29日,残高確認書(甲3の3)を作成し控訴人に交付したが,その残高確認書には「契約番号,カ099000402。
受取金額,50000円。
本日残高,800683円。
旧債務残高は750683円。
平成12年1月30日まで弁済は16回払」の記載がある。
5被控訴人は,控訴人との間で,平成11年9月30日,限度額融資契約証書(甲1の1)を作成し,被控訴人に交付したが,その証書には「契約番号,カ099005。極度額,850000円。最終返済日,平成13
年10月30日。
借入期間,平成11年9月30日から平成13年10月30日まで。
約定支払日,毎月30日。
利率,実質年率29.2%。
期限後利息(遅延損害金)年率39.79%。
利息計算方法,借入残高×実質年率÷365日×利用日数。
元金返済方法,最低額返済方式とし,5万円以上返済すること。
返済期日,毎月約定支払日。
支払金の充当の順位,毎月の支払いは遅延損害金,利息,元金の順で充当されるものとします。
次のいずれかに該当したときは貴社からの通知,催告がなくても期限の利益を喪失し期日未到来といえども融資残高金額に利息及び遅延損害金を付加して直ちに支払うものとします。
・・・約定支払日までに前記約定金額の支払いを一度でも遅延し或いは支払いを怠ったとき。」との記載がある。
被控訴人は,同日,残高確認書(甲1の2)を作成し控訴人に交付したが,その残高確認書には「契約番号,カ09900501。
受取金額,780000円。
本日残高,780000円。
旧債務残高は・・・。
平成11年10月30日から平成13年1月30日まで弁済は16回払」の記載がある。
被控訴人は,同日,受取書(甲4の100)を作成し控訴人に交付したが,その受取書には「契約番号,カ09900402。
受取金額,750029円。
年利率,29.2。
期間,H11.08.26H11.09.29。
日数,35。
利息金,20428円。
元入金,729601円。
前回残元金,729601円。
今回残元金,0円」の記載がある。
6被控訴人は,控訴人から弁済を受ける都度,受取書(甲4の1ないし116)を作成し,振込による支払でない各支払については受取書が交付されたが,その余の振込による弁済の場合には,受取書が直ちに控訴人に交付されることはなかった。
もっとも,控訴人の請求があって交付されたものもあった。
7控訴人は,平成4年3月1日以降月に5万円以上支払ったことはほとんどないにもかかわらず,被控訴人が,控訴人に対して,残元金の返済を請求したり,平成4年2月1日以降の約定遅延損害金を請求したりすることはなかった。
かえって,受取書(甲4の2ないし116)には,約定利息(日歩8銭)が発生している旨の記載がある。
平成4年2月1日の1万2000円の弁済については,控訴人に交付された受取書(甲4の1)に,貸付金50万円に対する同年1月8日から同月31日までの利息との記載とともに,その利率は日歩10銭との記載もある。
2 本件各貸付けにかかる遅延損害金について
上記1(2)7の認定事実によれば,被控訴人は,平成4年3月1日以降控訴人が分割弁済金の支払を怠っても直ちに期限の利益を喪失したとして残元金の返済を求めたり,平成4年2月1日以降の遅延損害金の請求をしていなかったことが認められ,被控訴人は,控訴人に対し,期限の利益の喪失事由に当たる事実があっても,これを宥恕していたものと認められる。
このような場合,あらためて被控訴人が控訴人に期限の利益を喪失させる旨の意思を表示しない限り遅延損害金は発生しないとみるのが相当である。
平成4年1月8日から同月31日までの間も,上記受取書(甲4の1)の「利息」との記載や,被控訴人提出の計算書(甲5)において,遅延損害金ではなく利息として扱われていることから,遅延損害金は発生していないと認められる。
3 充当計算の方法について
(1)みなし弁済について
被控訴人は,本件各貸付けにつき,貸金業法43条のいわゆるみなし弁済規定の適用がある旨主張するので,本件各貸付けにつき,貸金業法17条所定の契約書面の交付があったといえるか否かにつき検討する。
貸金業法17条が同条にいう契約書面の交付を義務づけた趣旨は,同法18条にいう受取書面の交付を義務づけた趣旨と同様に,その交付によって,貸金業者から利息制限法の制限を超える利息ないし損害金の支払を約して金銭を借り入れた債務者に対し,その支払うべき利息ないし損害金,あるいは支払った利息ないし損害金がどのように元本に充当され,その結果として,その後に支払うべき利息あるいは損害金ないし残元本の額が明らかになる資料を提供させることによって債務者の保護を図ると同時に,貸金業者に対し,いわばその見返りとして,利息制限法の制限を超える利息ないし損害金の支払を受け得ることができるとしたものであるから,貸金業法17条にいう契約書面の交付があったといえるか否かを判断するに当たっても,この見地から検討する必要がある。
この見地からすれば,貸付限度額その他貸付けの具体的条件を定めて反復継続して貸付けを行う旨の融資契約(包括契約)を締結し,この契約に定めた条件により個々の貸付けを行う契約形態においては,先に交付された書面には,当該書面のみでは,貸金業法17条所定の事項の全部を記載しているわけではなく,次に交付することが予定されている書面があって,かつ,当該書面で同法17条所定の残余の事項が記載されることをあらかじめ明らかにした上,次に交付された書面には,先に交付された書面を受け,残余の事項が記載されるほか,この書面が包括契約と同一機会に交付されたものでない場合には,この書面だけで,具体的な貸金額に基づく返済期間,返済回数,各回の返済期日及び返済金額,返済の充当関係などの記載が一義的,具体的かつ明確に記載されていることを必要とするというべきである。
そして,その包括契約に際し,従前の貸付けに基づく債務の残高を貸付けの金額ないしその一部とした場合には,その交付する書面に,貸金業法17条1項3号所定の「貸付けの金額」についての契約の内容を明らかにするものとして,従前の債務の残高の内訳(元本,利息,損害金の別)及び従前の貸付けを特定するに足る事項を明記しなければならないものと解するのが相当である。
かかる観点から,まず,平成4年1月8日から平成6年8月3日までの各貸付けについて検討するに,同各貸付けに際し貸金業法17条所定の契約書面が交付されたことを認めるに足りる的確な証拠はない。
平成4年1月8日の貸付けについて,極度額融資保証契約証書が控訴人に交付されたことが窺われるが(原審における被控訴人代表者及び控訴人本人),同契約書が貸金業法17条の要件を満たす書面であったことを認めるに足らない。
次に,平成8年5月14日から平成9年5月10日までの各貸付けについて検討するに,前記1(1),(2)の認定事実からすれば,同各貸付けは平成8年5月14日になされた包括契約に基づくものであること,平成8年5月14日の貸付けはいわゆる貸増しであること,被控訴人から控訴人に対し,同日,限度額融資契約証書(甲2の1),残高確認書(甲2の2),受取書(甲4の56)が交付されていることが認められる。
しかし,同各書面には,この貸増しの元本の内容が従前の債務の残高と新たな交付金員の合計額であることを明らかにした記載はなく,また,受取書(甲4の56)には従前の貸付けの契約番号の記載はあるものの,それ以上に従前の貸付けの契約内容を特定する記載はない。
これでは,控訴人がこの貸増しの内容を認識することは困難であるといわざるを得ないから,結局,この貸増しに際しては貸金業法17条の要求する契約書面の交付がなかったというべきである。
また,それ以降の平成9年5月10日までの貸付けも,残高確認書(甲2の3・4)に,具体的な貸金額に基づく返済期間,返済回数,各回の返済期日及び返済金額,返済の充当関係などの記載が一義的,具体的かつ明確に記載されているともいえないばかりか,平成8年5月14日の貸付けと一体となる契約であるにもかかわらず,平成8年5月14日の貸付けについて貸金業法17条の要求する契約書面の交付がなかったのであるから,同法17条の要求する契約書面の交付がなかったというべきである。
平成9年11月8日から平成10年9月29日までの各貸付けや平成11年9月30日の貸付けについても,上記と同様に,貸金業法17条の要求する契約書面の交付がなかったということができる。
以上によれば,本件各貸付けにつき,貸金業法43条のいわゆるみなし弁済規定の適用はない。
(2)過払いが生じた後の貸付金の交付等について
証拠(甲1の1・2,2の1ないし4,3の1ないし3,4の1ないし116,原審における被控訴人代表者及び控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,本件各貸付け(ただし,平成4年1月8日の貸付けを除く。)は,いずれも,貸増し又は貸換えのいずれかであることが認められる。
この貸増し又は貸換えについては,債務者が新たな信用を得るとともに新旧両債務を併存させることなく2つの債権債務関係を一本化しようとするものであると解されるので,これによって,法的に有効な旧債務の残額に債務者が現実に交付を受けた額を加えた合計額についての旧債務の貸借関係を清算することを目的として新たな消費貸借契約を締結したものと認められる。
そして,旧債務について貸主から借主に返還すべき過払い金があるときにも,当事者は旧債務の貸借関係を清算する目的として新たな消費貸借契約を締結したものと認められるから,その清算をする趣旨で新たな貸付金を交付したものと解するのが相当である。
(3)利息制限法所定の制限利率について
上記(2)で述べたところからすれば,本件各貸付けは一連の取引であると認められるから,利息制限法所定の制限利率を定めるについては,各貸付日における残元金額と当該貸付けに係る交付額の合計額を基準としてこれを定めるのが相当である。
4充当計算の結果について
そこで,1遅延損害金は発生しておらず,利息のみが発生していたものとし,2各支払につき,みなし弁済の適用はないものとし,3各貸付けにつき,旧債務の過払い金があるときはその清算をする趣旨で貸付金を交付したものとして計算するものとし,4各貸付日における残元金額と当該貸付けに係る交付額の合計額を基準として利息制限法所定の利率を定めるものとして計算すると,控訴審別表記載のとおりとなる(なお,同一日に借入れと返済がなされた形式がとられている場合は,便宜上,返済を先に記載した。)。
これによると,被控訴人の控訴人に対する貸金債務はすべて弁済され,控訴人は被控訴人に対し,89万9053円の過払いがあることになる。
したがって,控訴人は被控訴人に対し,89万9053円の不当利得返還請求権を有している。
5控訴人が被控訴人に対して89万6635円の不当利得返還を求めて反訴を提起し,その反訴状が平成13年8月7日に被控訴人に送達されたことは,当裁判所に顕著である。
6以上によれば,被控訴人の本訴請求は理由がないからこれを棄却し,控訴人の反訴請求は理由があるからこれを認容すべきである。
よって,上記と異なる原判決を取り消すこととし,主文のとおり判決する。
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